甘酸っぱい匂いが、夏の庭に満ちていた。
我が家の庭の茱萸(ぐみ)の木は、毎年夏休み中に実をつける。
しなやかにしなる枝に、指先ほどの小さな実がたわわに実る。
その実は鮮やかな深紅に輝いて、夏を象徴しているようだ。

「兄さん、どれが甘いと思う、」
弟は枝を見上げて、真剣な面持ちで言った。
「真っ赤なのを採りな。黄色みがかってるのは渋いから」
小さな手を伸ばして、弟は素直に赤い実を摘んで口に運んだ。
「…甘い」
白い頬が、満足そうに上気する。
「ねぇ兄さん。なら、あのてっぺんの実なんて甘いんじゃない、」
弟は、木の1番高い枝に実った一際赤い実を指差した。
「あれはだめ、もう少し待つんだ」
「どうして、あんなに真っ赤なのに」
「いいから、いいから」
…3日後。
てっぺんの赤い実が諦めきれずに、毎日木を見上げていた弟が声をあげた。
「兄さん、兄さん! あのてっぺんの実がなくなっちゃった、」
「熟して落ちたんだよ」
「さっさと採らないから、鳥に食べられちゃったかもしれないじゃないか」
弟は恨めしそうに睨んでくる。
「そう口を尖らせるなよ。木の下を探してご覧、」
半信半疑で、弟はしぶしぶ茱萸の木の下の茂みをかき分けた。
ほどなくして、興奮した様子で、弟が戻ってきた。
「兄さん、兄さん!」
「あっただろう」
「うん、あったはあったけど、」
「綺麗なルビーが落ちてたろう」
弟は目を丸くした。
「その木で1番日差しを浴びた茱萸の実は、夏の化身のルビーになるのさ」
弟は更に目を丸くした。
「どうだい。甘い実として食べるのもいいけど、夏の輝石も捨て難いだろう、」
丸くしていた目をふっと和らげて、弟はにっこり笑った。
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《ルビー》 7月の誕生石
和名:紅玉。
意味:情熱・純愛。
コランダムという鉱物で、赤い物がルビー、青い物がサファイアと呼ばれる。
ミャンマーで採れる光沢の素晴らしい逸品は、ピジョンブラッドと呼ばれる最高級品。(写真)
赤みが薄いものはピンクサファイアと呼ばれることもあるが、サファイアの語源は”青”を意味するラテン語からきているため、その呼び方は賛否両論。
失った愛を取り戻す力があるとされるパワーストーン。
