「兄さん、こっちこっち」
弟は何度もうしろをふり返りながら、強引に手をひっぱる。

「足音立てちゃダメだってば」
「どこへ行くんだよ、」
「いいとこ」
何度聞いても、弟はさっきからそれしか答えない。
河原の高い葦の茂みをかきわけて、ちいさな背中がずんずん進んでいく。
やがて、突きあたりの土手に行きつくと、少し高いところを指さした。
「見て、あそこ。あの横穴、カワセミの巣なんだよ」
「カワセミ、」
弟はにっこりとうなずいた。
「今、タマゴがあるはずなんだ。兄さんなら手、とどくでしょう」
「そのために連れて来たのか、」
答えずに笑ったその顔は、無邪気そのものだった。
その笑顔をくもらせるのは心苦しいけれど。
「ダメだ、そんなことできないよ」
「どうして、」
「あそこを見てご覧、」
すぐ側の木の枝に、美しい翡翠色の鳥がとまっていた。
弟は気づいてなかったけれど、巣に近づく時からあぁして見下ろしていた。
「卵をとったら、どうなると思う」
「…怒るよね、」
「そうじゃなくて。悲しむとは思わない、」
弟はハッとして目を伏せた。
無邪気な瞳は、もう親鳥の目を見れない。
「……帰ろう、兄さん」
弟はうつむいたまま、再び手をとって歩き出そうとした。
その時、親鳥が枝を飛びたって、弟の頭上でくるりと旋回した。
ふわりと、鮮やかな翡翠色の羽根が落ちてくる。
弟は、とっさに手をのばして受けとった。
ところが、のぞきこんで驚いた。
羽根だと思って受けとったのは、平たい小さなジェイドだったのだ。
親鳥の羽根と同じ色の小さな結晶。
無邪気に潜む邪気を封じこめた弟への、親鳥からの贈り物のように思えた。
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《ジェイド》 5月の誕生石
和名:翡翠。
意味:健康・幸運。
古くから珍重されてきた、半透明の宝玉。
中国では瑪瑙とともに玉と呼ばれて貴ばれてきた宝石。
日本でも勾玉の材料とされるなど、数ある宝石の中でも珍重されてきた。
緑の印象が強いが、白・青・黒・黄・薄紫など様々。
厄除けや魔除け、商売繁盛の効果があるパワーストーン。

