
南国の島へ渡る夜行定期船に、満月の夜を選んで乗りこむ。
大人たちが寝静まったあとは、船べりによせる波の音だけが静かにひびく。
弟は、時計の針が真上を向くのを待ちきれず、裸足で甲板に飛びだした。
「兄さん、早く。オトナ達が起きだすまえに」
「起きやしないさ、夕べのパーティでしたたか酔ってる」
弟を追って甲板へでると、身を乗りだして手すりにもたれた。
月が凪いだ水面に映って、天上と海上の2つの月が航路を照らす。
弟の白いシャツが、風を受けて帆のようにたなびいた。
「ほら、始まった」
ほの暗い海の底から海面へと、淡い薄紅色の光をはなつ小さな珠が浮かんできた。
それは1つ、2つと増えていき、やがて波間を埋めつくすほどの数になる。
蛍光を帯びた珠は、細波にたゆたいゆらゆらゆらめく。
弟は手すりから大きく身を乗り出して、今にも落ちそうになりながらも手を伸ばす。
「あれ、1つでいいからほしい」
「だめだよ」
「どうして、」
弟はなおも手を伸ばす。
「あれは珠じゃなく、卵だからさ」
「たまご、」
「あれが海底で育てば、もっと大きな石が採れるよ。だから今はまだ、そっとしておくんだ」
「そう、」
小さな手を引っ込めて、弟は頬杖をついた。
「なら、しかたないね」
薄紅色にほてった頬が、珠のようにふくらんだ。
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《コーラル》 3月の誕生石
和名:珊瑚。
意味:招福・癒し。
硝子質の光沢があり、昔から厄払いの宝石として珍重されてきた。
『珊瑚』の名でイメージされる濃赤色の珊瑚は、日本特有の赤珊瑚でとても高価。
赤以外にも、白や桃色のものもある。
女性のお守りや航海のお守りとされるパワーストーン。
とはいえ、鉱石ではない。
